2018年4月7日土曜日

谷崎潤一郎『春琴抄』新潮文庫

 春琴は類い稀な美しさと琴の才能をもち、それでいて盲目という常人とは別の世界に生きている神秘的女性。しかも強度の嗜虐的な性向を合わせ持っている。谷崎は嗜虐的性向を「性的な快楽」と結びつけて描く。ちょうど同時代のフロイトを意識していたのかは分からないが、一流作家の冴えがここから見える。
 
 通りがかりに登場人物の墓参りをすることになった導入部から、心情描写がほとんどなく、ドキュメンタリーのように行動を客観的に記している。かえってそれが読者と登場人物の間に適度な距離感を作り出し、登場人物の理解のしがたさを教えてくれる。そしてそれが、春琴の強烈な性格と、自分の目をつぶすことをも快ととらえことになる佐助との、奇妙で極端な関係性を一層際立たせている。

同じ著者の『痴人の愛』はいずれこのブログでも取り上げたい。谷崎は短編などでも優れたものが多く、いつか全集を読みたいと思っている作家である。


2018年4月2日月曜日

Write Dsign IT業界の歩き方のコラム(全4回)が完結しました。

Write Dsign IT業界の歩き方のコラムが(全4回)が完結しました。
年始には公開が済んでいたのに遅くなりましたが、ブログ内でもお知らせいたします。

​ITストラテジストから見たIT業界の課題と展望〜Write design IT業界の歩き方 

コラム






2018年1月の失業率が2.4%、2月が2.5%と、このコラムを書いたときより更に失業率が低下しており、コラムで取り上げた傾向がさらに進むと思われます。

2017年7月13日木曜日

Write Desginのページにコラムを書きました。

5月のことですが、機会をもらってWrite Desginのページにコラムを書きました。

ITストラテジストから見たIT業界の課題と展望について書いていきます。
第一回は肯定できない日本の状況についてです。
写真の評判が良かったので喜んでいます。

第一回 肯定できない日本の状況(リンク先)

2017年7月12日水曜日

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(2018・4・7改)

2016年2月28日日曜日

駒木明義ほか『プーチンの実像 証言で暴く「皇帝(ツァーリ)の素顔」』朝日新聞出版

朝日新聞国際報道部記者による、プーチンのドキュメンタリー作品である。プーチンを直接知る者たちへのインタビュー取材を元にまとめている。

人懐っこく人間的魅力を感じさせる面と、防諜畑の冷徹なKGBエージェントとしての一面と、世界でも最も影響力のある権力者としての一面がそれぞれ丁寧に描かれており、見事に仕上がっている。

私は、池袋のジュンク堂で印象的な装丁を見て立ち読みしてみたのだが、一気に引き込まれてしまった。臨場感のあるエピソードが随所にあるのだ。例えば、2000年9月の公式来日時の森首相とのやり取りのシーンだ。
「ソ連はロシアに変わるとき、カザフスタン、キルギス、ウズベキスタンといったソ連内の共和国をみんな解放した。チェコやハンガリーなど、共産圏の東欧の国々も全部解放した。彼らは自由になった。それは良いことだったと思う。彼らはEU(欧州連合)に入るという。それも、大事なことだろう。経済が大切なことはよくわかる。しかし、そこまでで止めるべきだった。なぜNATOに入るのか。NATOに入るということは、アメリカやカナダと一体になってロシアの包囲網を敷く。軍事同盟じゃないか。そんなところにやるために彼らを放したわけじゃないんだ。」(P69)
 クリミア半島併合の判断にもきっとこう言った認識上の背景があったのだと示唆に富んでいるし、北方領土問題への取り組みについても、プーチンのこの認識を忘れてはならないことがよく分かる。

2015年8月4日火曜日

ドキュメンタリー映画 『ルック・オブ・サイレンス』

インドネシアで起きた1965年の事件を、「共産主義者の排除に成功した歴史」として誇りにし、英雄としてアイデンティティの基盤にしてきた者たちがいた。
彼らは今も権力を持つ側にいる。

一方で、彼らを100万人を超える大虐殺事件の加害者と見ている被害者の家族がいる。

一人の被害者家族の男が、年老いた加害者たちに、検眼をする名目で近付き、当時の話を聞きだす。彼らは自らの英雄譚を楽しそうに話しだす。
そして、ひとおり聞いたところで、伝える・・・「私の兄はあなたに殺されました。」

その時見せた加害者たちの沈黙と、それを見つめる被害者家族の男。
その様子を見ていた加害者の家族の反応も映像に収められている。

「沈黙」の後ろに、かすかに聞こえていた虫の声が、今でも耳に残る。
(2015・8.4投稿分 改)

2015年1月25日日曜日

川端康成『眠れる美女』

 川端康成の作品の中で、官能と死を合わせて連想させるものを読んだのは初めてだった。『古都』や『伊豆の踊り子』の美しい詩のような透明感のある文体ではなく、デカダン(三島が言うような)ものだったのが驚きだった。
 川端は銀座の文豪の集まるクラブでお気に入りの娘の手を握って、話もせず黙っていたと島地勝彦のネットコラムに書いてあった。老人の性欲について書かれたこの作品は、川端の実体験と交錯するはずだ。あるはずのない乳呑児の匂いを嗅ぎ、それが幻覚であることに気づき、過去の思い出したくない体験の記憶を呼び起こすことになったが、これは実体験か?実体験かどうかにこだわるのは私自身の読解が狭量かもしれない。いずれにせよ素晴らしい描写のシーンであり、読者はここで生暖かい乳の匂いを思い出し、一気に作中に引き込まれると思う。
 また、
「女という女に絶望してしまったのは遠い昔のようなんだがね。君、眠り通して覚めぬ女をつくってくれたやつがあるんだ。」 (P20)
自分の 理想を投影できる存在(いわばアイドルが担っている存在)を希望(=絶望からの救い)として表しているわけだが、川端はそれが「きむすめ」「年若い女の裸」として描いている。年を重ねてもなお、いや、若い時よりもむしろ純粋にそして貪欲にその希少性を味わっている。
 川端には若い時に、同じような主題で「死体紹介人」という短編も著した。これも傑作なので、いずれ取り上げたい。

谷崎潤一郎『春琴抄』新潮文庫

 春琴は類い稀な美しさと琴の才能をもち、それでいて盲目という常人とは別の世界に生きている神秘的女性。しかも強度の嗜虐的な性向を合わせ持っている。谷崎は嗜虐的性向を「性的な快楽」と結びつけて描く。ちょうど同時代のフロイトを意識していたのかは分からないが、一流作家の冴えがここから見え...